介護業界の負の連鎖
介護業界はどうにも人が来ません。何が原因なのか考えてみます。
賃金が安い
勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うという話だった特定処遇改善加算が2019年10月に始まりました。しかし、職員間のバランスに苦慮し加算の申請をしない事業所もあるようで、最初の話とは大きく違う結果になっています。ちなみに特定処遇改善加算の月額8万円とは、全産業の平均賃金に追いつくために必要な額です。
この8万円を貰う最低条件は介護福祉士です。介護福祉士になるためには専門学校に2年通うか、3年の介護実務の経験があり、実務者研修を修了したうえで国家試験に合格しなければなりません。そこまでやって、はじめて全産業平均に並ぶ権利を得るのです。
資格や医療の知識も必要で看取りもする、ケガをさせてしまうリスクもあるなかでこの報酬では報われないと考えるのは普通でしょう。
3Kいや6K
3Kとは、「きつい」「きたない」「危険」の3つです。それぞれの主観ではありますが、少なくとも3Kに近い状況があります。最近では「帰れない」「厳しい」「給料が安い」の3つを加えた6Kという言葉もあり、若い人達はこれにあたる職種から探し始めることは少ないのです。
質の二極化
ヒトが不足すると採用の基準が甘くなります。中小零細の事業者は教育にリソースを割けませんのでそのまま質が低下しクレームが増えます。本来であれば知識や技術が不足している人には研修や教育を行い、それでもどうにもならなければ退場いただくしか質の低下は防げませんが、それが機能しません。さらに退職などでふさわしくない人が管理職になると、経験や知識がある人が入社しても管理職や同僚に辟易し退職していきます。
医療に近い対人援助職、ましてやマンツーマンでのやり取りが必要な職業ではかなり致命的です。
応募してくる人はどんな人
ハローワークや市町村は資格取得費用を助成するなど介護職を増やすことに力を入れています。 本当は違う仕事に就きたいけれどうまくフィットできなかった人や、とりあえず働きたいと思う人達も、介護業界はスムーズに就職できる可能性が高いのです。定員割れの専門学校や資格の学校では、職業訓練などの生徒がいるからなんとか存続してるという話もよく聞きます。
海外からのEPAなど外国人の参加もニュースになりますが、あくまでも施設など日本人が常にいる環境での就労です。マンツーマンになる訪問介護ではコミュニケーションや文化の違いなど活躍できる範囲はほぼありません。
止める方法がない?
長く蔓延った訪問介護の質の低下や、ヒト不足は簡単な対応で解決ができないレベルまで進んでいます。財源不足の中賃金を大幅に上げる事もできず、中小零細の教育へ姿勢を急に変える事も出来ません。若い人に選んでもらえるようにもならなければ、このままでは今の介護職が高齢化していくのを見届けるだけです。変化できない業界の中で私たちは介護崩壊を見守ることしかできないのでしょうか。